<シリーズ第21回>
福岡市から空路で約2時間の中国遼寧省・瀋陽市がさらなる発展を遂げる計画が進んでいることは前編の通り。アジアの各都市は戦略的プランを立てて、それぞれ経済的発展をねらっていることは言うまでもない。そのような動きを見ながら、アジアのなかの一都市である福岡市は、どうあるべきかを考えなければならない。「井のなかの蛙」だと、とてもじゃないが"リーダー"にはなれない。
「あまりに嘆かわしくて、涙も出ん!」。
あるベテラン福岡市議は、深いため息とともに福岡市の現状を憂えている。福岡市の港湾事業に対する一般質問を作成するうえで、担当職員とやり取りしたところ、隣国でもあり、ライバル国でもある韓国の港湾事情について、まったくと言っていいほど無知であったからだ。
博多港の約20倍もの量のコンテナを取り扱う韓国・釜山港が、なぜ、急成長を遂げたか―。それは、1㎡あたり45円、つまり1坪あたりで約150円という破格の安さで土地を貸すなどのインセンティブ政策の存在が大きい。3,000坪の敷地に倉庫を建てたとしても、ひと月の土地代はたったの3万7,500円である。このほかにも、インフラが整っており、電気代も安い。同じ仕事をするならコストが圧倒的に安いほうが選ばれるのは当然だ。
前出のベテラン市議によると、対面した港湾担当職員は、近隣諸国の港湾事情について何ら頭に入っていなかったというのである。それでいて一体、どのような港湾計画を建てるつもりなのか。同市議はあきれ果てる一方で、そのような部下からの報告を受けている高島市長に同情している。
瀋陽市への視察についても、地方政府が費用を負担して、企業・研究者をアジア各国から招待している。中国の官がスポンサーとなる産学官連携が今後増えていくだろう。こうした動きに何ら手を打たずにいては、産業・技術の空洞化はますます進む。『アジアのリーダー都市』を目指す福岡市が、経済成長戦略を描いていくには、「情報発信」だけではなく「情報収集」も重要となる。
(了)
【山下 康太】
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